けっきょく、トラブル

ある日のこと。
私が仕事のトラブルでリフレッシュするために会社の方から休暇をいただいた。

私自身、かなり落ち込んでいたこともありその日は朝からゆっくりしようと考えていた。
彼女が起床し、第一声。
「今日は何する?」
予定を入れたくない私に取って、かなりストレスになる言葉だった。
もちろん仕事でのトラブルは彼女にも伝えている。

できればゆっくりしたいかな、と答えると

「買い物はどうするの?」

と返ってきた。

現状、急ぎで買うものは特にない。
食材も豊富に揃っているし、日用品なども次の週末まで持つだろう。
何より、買い出しとなると車を出すことになる。

仕事のトラブルというのも、私は運転をメインにする仕事をしている。
事故を起こしてしまい、どうしてもハンドルを握る気になれなかった。
そんな中で彼女からの「出かけたい」「買い物に行きたい」は負担でしかなかった。
彼女は楽しそうに買い物リストを作成し、重たいものを中心にピックアップしていた。
私が一緒に行くから当然だろうし、重たいものはなるべく私が持ちたいとも思う。
しかし一つの疑念が湧いてくる。
車が必要ということか?

あまりにも納得がいかなかったので聞いてみることにした。

遠くに出かけたいってこと?

「うん」

車でどこかに行きたいってこと?

「うん」

本当に意味がわからなかった。

事故を起こして運転する気になれないから、車で出かけたくない。

「近くのスーパーに行くだけなんだから歩きで良くない?」
「車じゃないとダメなんて言った?」

耳を疑った。
朝からこのやりとりで、一気にイライラが募ったこともあり、キツイ物言いをしてしまった。

いや、この買い物リストなら車が必要と思うのは当然じゃないか?
普段から買い物に行く時は車を出している
この流れで徒歩で行くなんて想像ができる?

すると彼女は泣き出した。

「もういい、いかない」

「私がどこかに出かけたいと言ったら、いつも嫌そうな顔をする。」

「今日はゆっくりしたい、何もしたくない、そんなことしか言わない。」

「何をするにしても、さっさと済まそうとする。その言い方が嫌。」

確かに私も良くなかったと思う。
仕事で疲れていたので、本当に家でゆっくりしたかった。
その気持ちを先行させていたことは反省すべき点であると思う。

「どこにも連れて行ってくれない」

彼女からそう言われたが、実は月に数回、車を出したり電車を使って遠くの方へ遊びに行っている。
それを思い出したのか、私が反論する前に彼女が付け加える。

「確かに前に連れて行ってくれたことはあるけど、あれは連れて行ってもらったうちに入らない。」

暴論である。
言葉も出なかった。

「疲れているというけど、終電を逃すわけでもなく休みを返上して働いている訳でもない。」

「そんな人に疲れていると言われても納得できない。」

「頑張っていない、という気はないけど、体力がなくなるほど働いているとは思えない。」

現状、私の勤務時間は7:30ごろから19:30ごろまで。
DtoDで大体7〜20時が平均である。
週休1.5日ほど。
隔週で6日勤務になる。
今までの仕事は完全週休2日で残業無し、有給も気軽に取らせてくれるところだったので、自分で選んだとはいえ体力的にはなかなかキツイ。
さらに彼女から追い討ちが。

「私が復職して夏になったら絶対にどこにも出て行かない。どうせ休みも合わせてくれないでしょう?」

「だから今のうちにと思って出かけたいのに、休みの日になると家でゆっくりしたいという。」

「それが私は本当に嫌だ。」

「もういい、私からは声を掛けない、もう知らない。」

そう言って彼女は寝室に戻って行った。

復職したり、夏になったら出て行かない、というのは彼女の方の都合ではないだろうか。
現状は私がしっかり働いて稼がないと生活も厳しくなるのに、その点は無視なのだろうか。
色々なことが頭をよぎったが、私にも良くないところがあったので少し時間を置いて謝罪することに。

ごめん、言い方が良くなかった。

「もういい」

「買い物も行かないし遊びにも行かない、声を掛けることもしない」

取り付く島もないまま、彼女は布団の中で携帯を弄りながら私に背を向けた。

今日はもう話し合いできそうにないと考え、さらに時間を置いてから私も布団に入ることにした。

「寝る?」

そう言って彼女は布団を出て、外出する準備を始めた。

私は事故や日々の疲労もあり、すぐに眠ってしまった。
気づけばドアを出ていく音が聞こえ、そこから現在の夜更けまで彼女は帰ってきていない。

少し思い当たるところがあり、【彼女 モラハラ】で検索してみた。
どのサイトを見ても、それなりに彼女の挙動に該当している。
それに次いで出てきたのが【境界性パーソナリティ障害】だった。

確かに当てはまる部分は多くあるが、もしかするとその二つは私に当てはまるのかもしれない。
自分が彼女にモラハラをしているのではないか、自分勝手な行動を押し付けているのではないか、そんなことを考えているうちにどんどん時間が過ぎていった。

やっぱりもう、今すぐにでも別れたい。
一緒にいるのはお互いの為にならない。
何より私が逃げ出したい。
そう考えている以上、私はモラハラ気質でもなければ境界性パーソナリティ障害でもないのだと思う。
私は彼女を支配したいと思わないし、一方的に無視することもない。
できれば落ち着いて話し合いたいし、お互いにちょうど良い落とし所を見つけたいとも思う。
そういう風に話を進めることもあるが、最終的には彼女が泣いてこちらの言い分を全て突っぱねて終わることになる。
そして決まり文句の「私が折れるしかないから」を聞かされることになる。
私は思う。
『モラハラ、異常な考え方をしているのは私の方なのか?』
罪悪感に苛まれる日は続く。